宇宙機関にロゴ論争があると聞けば、多くの人は驚くかもしれない。しかしNASAは50年以上にわたって二つのロゴを持ち、どちらを使うかという問題が機関の内部文化を反映し続けてきた。
ミートボール(1959年)
NASAが1959年に制定した最初のロゴは、通称「ミートボール」と呼ばれる。青い球体に赤い軌道軌跡、白い星と文字——アメリカの宇宙への夢を正面から描いた図像だ。
複雑に見えるが、要素の一つひとつに意味がある。青い球は惑星を、白い星は宇宙空間を、赤い翼形はNASAの航空研究を、白い軌道はNASAが宇宙探査に向けて進む軌跡を示す。1960年代の宇宙競争の高揚感を体現したロゴだ。
ワーム(1975年)
1970年代、連邦政府は各機関のビジュアルアイデンティティ統一を推進した。デザイン会社Danne & Blackburnが設計したNASAの新ロゴは、「NASA」の4文字を幾何学的な曲線でつなげたシンプルな書体ロゴだった。その形から「ワーム(虫)」という愛称がついた。
これはモダニズムの美学の産物だ。余計なものを削ぎ、機能と形を直結させる。ミートボールの複雑な図像を廃して、文字だけで認識させるという決断。
1992年の廃止と2020年の復活
1992年、ダン・ゴールディンNASA長官はワームを廃止し、ミートボールへの回帰を決定した。理由として「宇宙飛行士や従業員が伝統的なロゴを好む」ということが挙げられた。ワームはアーカイブに消えた。
ところが2020年、SpaceXのFalcon 9ロケットでCrew Dragon が打ち上げられた際、ロケット側面にワームが復活した。Elon Muskが「ワームの方がかっこいい」と判断したとされる。NASAはその後、正式にワームを復刻版として再導入した。
二つのロゴが共存する意味
現在のNASAは状況に応じてロゴを使い分けている。制服・施設などの公式文脈ではミートボール、商業パートナーシップやモダンなコンテキストではワームが多い。
これは矛盾ではなく、組織の二面性を正直に反映している。NASAは政府機関であり、同時に未来への前進を体現するブランドでもある。ミートボールは前者、ワームは後者の顔だ。
デザインの「正しさ」よりも、誰に向けて何を伝えるかという問いの方が先にある——NASAのロゴ史はそのことを教える。